【時計雑学】カラトラバの魅力【PATEK PHILIPPE】

こんにちは、MOON BRIDGE時計屋です。

今回は、パテック フィリップの基幹コレクション『カラトラバ』の魅力をご紹介いたします。

■カラトラバ誕生秘話

カラトラバは1932年にドレスウォッチラインとして誕生しました。
カラトラバの誕生経緯は、パテックフィリップが経営難に陥り転換期へと舵をきる時代背景に発表されたプロダクトになります。

 1929年の10月にアメリカ ウォール街の大暴落により、世界恐慌の引き金となります。アメリカ市場に依存していたパテックフィリップは世界恐慌の煽りを受けて経営不振に陥ります。
そこで起死回生の一手として「ブランドの伝統と卓越性を維持しつつ、ファン層を広げる」ために誕生したのがカラトラバだった、というわけです。
この試みが大ヒットしたことは言うまでもありません。

■『カラトラバ』の名前の由来
「カラトラバ」の名前の由来は、パテックフィリップの伝統的なエンブレム「カラトラバ十字」です。剣と十字架(4つの百合の花)を組み合わせたロゴで、12世紀頃、スペインで初めて設立された戦争騎士団の名前にちなみました。もともと同社は、カラトラバ騎士団の勇猛果敢な戦いぶりに敬意を表していたためです。
すなわち、カラトラバはパテックフィリップの歴史の象徴とも言うべき存在なのですね。




■ドレスウォッチの完成形とされるカラトラバ
1932年のデビュー以来、フォーマルなシーンに最適な逸品として信頼を獲得し続けているカラトラバ。
カラトラバ最大の特徴といえば、シンプルで無駄のない優美なラウンドフォルムでしょう。

美しいラウンドフォルムのケースから続く洗練されたデザインのラグ、無駄の一切を省いたシンプルな文字盤デザインながら、インデックスの立体感や上品なドフィーヌ針(針の真ん中が山折りになっている)で視認性にも優れ、全てが完璧なバランスで造形された究極の時計といえる作品になっています。

このデザインは、「機能がフォルムを決定する」という20世紀初頭のドイツ・バウハウス哲学に強く影響を受けています。

時代や流行に左右されないシンプルで美しいデザインは、発売から90年が経過した現在でも古さを感じさせることなく、フォーマルなシーンに合うドレスウォッチとして人気を集め続けています。


■注目のモデルを数点ご紹介
カラトラバには、クンロクの後継機をはじめ、多数のバリエーションが存在します。
年代や使われている素材によっても大きく印象が異なるため、自分好みのカラトラバを見つけることができます。

1本目:Ref.5196


カラトラバの中で型番の末尾に「96」があるモデルは、初代モデルのクンロクの正統後継モデルです。

Ref.5196は、2004年に登場し長らくクンロク後継モデルとして人気を集めていましたが、2022年に生産終了となりました。

初代モデルのDNAを色濃く受け継いだデザインと、37mmという現代のニーズに合わせたサイズ感で、今なお絶大な人気を誇るモデルです。

ムーブメントも、最新の技術を備えた手巻きのCal.215PSを搭載。パテック・フィリップの伝統的な手巻きムーブメントでありながら、小ぶりでスリムなサイズ感も魅力です。

見た目はクラシカルな手巻きムーブメントでありながら、毎時28,800振動とスペックは現代的。伝統的な美しさと最新技術を兼ね備えた逸品と言えます。


2本目:Ref.6119

Ref.6119は、2021年に登場したモデルのカラトラバです。

この時計の一番の特徴は、最新の手巻きムーブメントを搭載していること。

近年の時計は、実用性の高さからほとんどが自動巻きを搭載しており、手巻きムーブメントは絶滅危惧種とも言われています。

カラトラバの多くのモデルでも、1976年から使われているCal.215を搭載していました。

このムーブメントは、傑作手巻きムーブメントと称されることもありますが、直径が21.5mmと現代のニーズである35~40mmの腕時計に搭載するには少し小さめ。

とくにスモールセコンド搭載の場合、スモールセコンドが文字盤中央部に寄りすぎてしまうという弊害もありました。

それに対し、新作ムーブメントのCal.30-255は、直径30.4mmと約8.9mmも大きくなっており、スモールセコンドもより最適な位置に収まるようになりました。

また、動力源である香箱を2つを備えたツインバレル方式を採用しており、パワーリザーブが約65時間という長さを実現しています。

クンロクをはじめ、往年の名作カラトラバからの意匠を随所に感じられるデザインも魅力のひとつ。クル・ド・パリが施されたベゼルも美しさを引立てています。

 

3本目:Ref.6007G

 

Ref.6007Gは、2023年に発表されたカラトラバの最新モデルです。

イエロー、レッド、ブルーの原色を用いた文字盤が特徴のこのモデルは、これまでのカラトラバとは一味違うカジュアルな雰囲気が印象的です。

ケースサイズ40mmと、カラトラバとして大きめのサイズ感も特徴のひとつ。ケースはホワイトゴールドで、30m防水を備えています。

ブラックをベースとした文字盤は、時と分のトラックにはイエロー、レッド、ブルーのアクセントが施されています。

センターに配置された秒針も、それぞれのアクセントカラーと同じ色が採用され、革ベルトのステッチにも同色が使われています。

カジュアルさを引立てているアラビアインデックスと針には、夜光塗料が塗られており暗闇でも時刻を確認できます。

カラトラバらしからぬカジュアルなデザインですが、随所にパテックフィリップならではのこだわりが見られます。

一番目立つのは、文字盤のセンターに施されたギョーシェ加工。その周囲にはペルラージュとサテン仕上げが施されています。


■番外編:Ref.5088/100P-001

クラシックさが魅力のカラトラバですが、こちらの「5088/100P-001」は文字盤に18金ゴールドや手彫金を搭載したデザインが奇抜で「カラトラバぽくない」と言われることの多いモデルです。

奇抜な印象を受けるモデルですが、超薄型のムーブメントを搭載しているなど機能性やつけ心地は抜群で、カラトラバの中でも価格帯が群を抜いています。

こちらの商品は過去に当店でも取扱いがありましたが、やはり文字盤の装飾が美しく熟練した職人の技術を感じることががきましたね〜

 

ドレスウォッチの完成形とされるカラトラバ、これほど存在感がありながら、使いやすいモデルを見つけるのは難しいはずです。

ぜひ、永遠のクラシックを手に入れ、エレガンスの極みを実感してみてください。